2017年9月30日土曜日

黒潮の蛇行

気がつけば、もう 9月末。あと 3カ月も経てば今年も終わりですね。

29日に気象庁から「黒潮は、8月下旬から、紀伊半島から東海沖で大きく離岸して流れる状態が続いており、12年ぶりに大蛇行している」という発表がありました。黒潮とは日本近海を流れる海流のひとつです。

この黒潮は、本州の太平洋岸に沿って流れる状態(非蛇行)と、紀伊半島から東海沖で大きく離れる状態(蛇行)の 2つの状態を繰り返すことが知られています。大きく蛇行すると漁業に大きな影響を及ぼすほか、船の航路にも影響が及ぶため注意が必要です。下の図は黒潮の非蛇行(左)と蛇行(右)の状態を数値シミュレーションで再現した状況です。

黒潮の非蛇行(左)と蛇行(右)の状態を示した数値シミュレーション。
本州の太平洋岸に沿って流れる海流が黒潮です。
Matsuura & Fujita, Journal of Physical Oceanography, Vol. 36, No. 7, 1265-1286, 2006

実は、なぜ黒潮がこのように蛇行したり、しなかったりするのかについての理由はよくわかっていません。以前、私の所属していた研究チームで、海流の運動の状態を 2つの渦の相互作用で説明することができるのではないかという研究を行なっており、そのときに発表した論文の一部が上の図でした。

黒潮のような海流は、単なる海の水の流れではなく、巨大なパイプの中を流れる海水の流れのようなものだと専門家から聞いたことがあります。確かに、この黒潮にのって温かい海にすむ魚たちが北上し、それらを捕獲して私たちは食べているわけです。そのため、黒潮が蛇行すると漁場が南下していきます。経済的には漁船は港から離れて操業することになるため、費用がかさむというわけです。

回転する方向が違う 2つの渦が並んで存在しているとき、2つの流れが接して同じ方向に流れるところでは、流れのパターンが直進的になったり、ならなかったりという状態を周期的に繰り返します。この物理的なメカニズムが、黒潮の蛇行・非蛇行に応用できるのではないかという研究でしたが、現在も多くの研究者がこの問題に取り組んでいます。

宇宙はまだまだわからないことがたくさんありますが、実はこの地球上のことにもわからないことがたくさんあるのでした・・・

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