2017年8月29日火曜日

納豆の「ねばり」のもと


「納豆はどうして粘るのですか」・・・ こんな質問が寄せられました。放送でも回答したものです。「納豆は好きなんだけど、あの粘りがなければもっといいのに」と思っている人や、「納豆は粘るから納豆でしょ」と思っている人など、さまざまでしょう。

納豆は大豆を蒸したものに、納豆菌を加えて発酵させたもの。納豆菌が大豆のタンパク質をアミノ酸にへと分解していきます。このような菌のはたらきを「発酵」といいます。菌のはたらきと聞いて、多くの人の頭には「腐敗」という言葉も浮かぶことでしょう。実は、発酵も腐敗も、菌にとっては同じことをしていることを指す言葉。人間に役立つはたらきだったら「発酵」、人間に迷惑なはたらきだったら「腐敗」というのです。

さて、納豆に話をもどすと、この発酵によって「ムチン」と「ポリグルタミン酸」がつくり出されます。ムチンは生物がつくる粘液に含まれる、粘りをもった成分で、放送では言わなかったのですが、私たちの気管から分泌される「痰(たん)」の成分もムチンです。ポリグルタミン酸は、うまみ成分のグルタミンが繋がったもので、これが糸を引く物質の主成分。納豆をかき混ぜればかき混ぜるほどポリグルタミン酸がちぎれてグルタミン酸になり、うま味が増すのです。ほどほどの混ぜ具合というものがあるようですが、少なくとも数回かき混ぜるよりは、たくさんかき混ぜた方がよさそうです。

納豆の粘りは痰と同じ成分なんだ〜、というのもちょっと食欲を減退させてしまいそうな気がしたので、放送では話しませんでした。でも、ムチンは生物の粘液に含まれていて、微生物や小さなゴミを粘液にくっつけて、体の内部に入っていかないようにしてくれている、大切な物質です。

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