2015年5月29日金曜日

ホンモノとニセモノ

 最近は3Dプリンターがずいぶん安く入手できるようになり、工学系の研究・教育にはずいぶん多く使われているようです。3Dプリンターとは、特殊な樹脂で平面を描きながら、それらを積み重ねて立体にする方法などによって、縦・横・高さの3次元の立体を作るものです。私はまだ、3Dプリンターが稼働しているところを見たことがないのですが。

 そんな3Dプリンターを生物学の研究で活用したアメリカのグループが、論文を発表しました(“Using 3D printed eggs to examine the egg-rejection behaviour of wild birds” in PeerJ Computer Science)。3Dプリンターで作ったニセモノの卵をコマドリの巣に入れたところ、すべての卵をそのまま温め続けたそうです。

 ほかの鳥に卵を温めてもらう習性(托卵)をもつ鳥がいます。北米に生息するコウウチョウという鳥は、この托卵する習性をもっており、コマドリの巣に卵を産みつけます。先ほどのコマドリの巣に、3Dプリンターで作ったコウウチョウの卵を入れたところ、コマドリはニセモノの79%を巣から取り除いたそうです。

 托卵する習性のある鳥で有名なものに、カッコウがあります。カッコウはホオジロやモズの巣に卵を産み付け、代わりに育ててもらいます。育てさせられる親鳥は、自分の卵ではないことに気がつかないまま、懸命に育てます。カッコウが托卵するときには、数を合わせるために、カッコウの卵の数だけ巣の中の卵を持ち帰るとか。実は、親鳥が托卵された卵(自分の子孫ではない)と自分が産んだ卵を、どのようにして区別しているのか、あるいは区別していないのか、よくわかっていません。

 今回発表された研究は、コマドリがどのように托卵された卵と自らの卵を分けているのか、卵を認識する機能を明らかにするための研究に役立つと期待されています。自分の子供ではない雛を育てるコマドリは、ほかのヒナと似ていないヒナをどう思って育てるのでしょう。一方で、本当の親を知らないコウウチョウのヒナを思うとなんだか切なくなってしまいますが…

<SMC-Japan.org から配信された情報を利用しています。>

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